UCM解析

その5:協調性をグラフで見てみよう!(その2:位相面グラフ)


S銀研究員:え〜と、前回、3枚のグラフから協調性を読み取る話をして、その3枚のグラフの代わりに1枚のグラフでなんとかならないか、ってことでしたよね。

Y田研究員:そうそう。

S:1枚のグラフにするのなら、とりあえず3つのグラフを重ねるような形で1枚にまとめる、ってことですか?

Y:確かにそれもあるね。じゃ、ちょっとヒント。前回のグラフの例だと、試行回数が20回、つまりひとつのグラフに20個の点がある。3枚のグラフを単純に重ねた形にすると、点の数は60個になってごちゃごちゃしちゃうけど、これから言う方法だと、点の数は20個で済む。

S:ははぁ、もしかしたらこんな感じですか?

(S銀研究員、ノートパソコンをで下の図を描く)

縦軸に音量、横軸に試行回数をとったグラフ
Y:そういうこと。メンバー1の音量を横軸に、メンバー2の音量を縦軸にとって、さっきのグラフの内容を再構成するわけです。左の図の1回目の試行では、メンバー1の音量が11、メンバー2の音量が9だから、(11, 9)の座標に相当する。

S:こういうことですね。
縦軸に音量、横軸に試行回数をとったグラフ

Y:そうそう。残りの点も同じようにプロットしてみて。

S:らじゃー。では、残りの2点目から20点目までとりあえず緑色でバシバシっと。 縦軸に音量、横軸に試行回数をとったグラフ

S:はい。こんな感じになりました↑↑。いくつか同じ座標のときがあったので、見た目は20点ないですけど。

Y:OK。音量の値を全部整数にしたせいか、実はあんまり典型的な形になってないけど、まあとにかく、二人のメンバーの音量の関係を1つにまとめたこのグラフから、協調性をみることができるんだけど、どういうことかわかる?

S:プロットの形が馬みたいに見えますね。

Y:そうそう。プロットの形が馬に近いときは協調性が低くて、猿に近いときには協調性が高い...って、そんなわけないやろ! だいたい普通は馬じゃなくて犬とかに見えるんじゃない?

S:関西風のノリツッコミに挑戦ですね。
えーと、全部の点が割と近くに集まってますよね。つまり、二人のメンバーがそれそれ音量の変動を小さくしようとした結果、両者を軸にとった平面でのプロット点は狭い範囲に集まるってことですよね。それを強調すると、だいたいこんなイメージでしょうか↓↓。
縦軸に音量、横軸に試行回数をとったグラフ
Y:実は、プロットが狭い範囲に集まっているかどうかは、本質的な問題じゃないんだ。大事なのは形。

S:やっぱり馬型?

Y:強いて言うならミミズ型。いま作ってくれたグラフは、協調性の無い場合の例だけど、じゃ、今度は右のグラフの例、つまり協調性のある場合の例を同じ形式のグラフにしてみて。

S:楽勝です。
縦軸に音量、横軸に試行回数をとったグラフ
S:今度は紫色でプロットしてみましたけど、色の違いは別としてもさっきのグラフとはだいぶ違いますね。プロット範囲は広いようですけど、細長い楕円上にまとまっているように見えます。....これをミミズと言ったわけですね。ミミズはどうかなぁ。

Y:動物のことはもう忘れて。ポイントは、さっきのグラフは円に近い領域に点が集まっていたけど、今度のグラフ、つまり協調性のある場合のグラフは、こんなふうに楕円状というか、直線状のグラフになるということ。

S:直線状になるということは、二人のメンバーの音量の「相関」が高い、ということですね。

Y:上の例では相関が低いから円状で、下の例では相関が高いから直線状になっているのは確か。でも、「相関」が高いということと、「協調性」が高いということは同じではない。相関が高ければグラフは直線状になるけど、この例では、どんな直線になるかが大事。

S:そうか、この例では右下がり直線状なので「負の相関」ということになりますが、相関が高くても右上がりの「正の相関」になってはダメですよね。メンバー1が大きな音を出したときに、メンバー2も大きな音をだしたら、合計の音はすごく大きな音になっちゃいますから。

Y:確かに傾きは1つの重要な要素。でもそれだけじゃない。中学校で習った直線の方程式を思い出せば、直線を決める要素は傾きと...

S:「y切片」!

Y:それそれ。傾きと切片がきまれば、直線が決まる。直線の方程式ができる。今回の課題を方程式で表してみよう。
 [メンバー1の音量] + [メンバー2の音量]=[合計の音量]
合計の音量の目標値に20を代入すれば、
 [メンバー1の音量]+ [メンバー2の音量]= 20
さっきのグラフにこの直線を入れてみて。

S:じゃあ、グラフの座標(20, 0)と(0, 20)をつなぐ直線を引いてみますね(赤でキュッと)。中学生向けにいえば、「傾き(-1)でy切片20の直線」、"y = -x + 20"ですね。

縦軸に音量、横軸に試行回数をとったグラフ

S:なるほど。確かにその直線付近に集まってるみたいです。うまく協調がとれていると直線に近づき、協調がとれていないと直線から離れる、ってことですね?

Y:まあ、そういうことなんだけど、良くみるとね、協調性の無い方のグラフも、この直線に近いところに点が集まっているんですよ。だからこそ、合計の音量が目標値に近い。単に直線からの距離を見るだけではだめ。

S:確かに。各点と直線との距離を合計するとしたら、協調性のある方のグラフも無い方のグラフも同じようになっちゃいますよね。じゃあ、どうすればいいんですかねぇ。

Y:形の違いを定量化する、っていうことですよ。

S:やっぱり馬型?

Y:馬から離れて。次回はいよいよUCMの具体的な計算に入りたい!


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