UCM解析

その6:バラツキってどうやって計算するの?


S銀研究員:さてさて、次は実際に計算してみようというお話でしたね。

Y田研究員:まず、前回のグラフを2つ並べて見てみようか。

縦軸にメンバー1の音量、横軸にメンバー2の音量をとったグラフが二枚並ぶ。二人の音量の合計が20となる赤い直線が描いてある。20点プロットされ、一方はのタイトルは協調性なしで馬型。もう一方は協調性ありでプロット点が赤い直線に沿って広く分布している。

S:このカタチの違いを定量化するにはどうしたらよいのか??ということでしたよね。言ってるそばから既に自分で意味がわかりませんが(笑)

Y:2のグラフは、どちらも赤い直線周辺に集まっているのは同じだけれど、二人の協調性を判断するときに大事なのは「方向別のバラツキの大きさ」の違いなんだ。

S:方向別のバラツキの大きさ、ですか?

Y:そうなんだけど、「方向別のばらつき」の話をする前に、まず単なる「バラツキ」の話をしよう。左のグラフと、右のグラフ。ぱっと見て、どちらの「バラツキ」が大きいように見える?

S: ぱっと見、明らかに右ですね。

Y: 誰が見ても、そうだよね。ところで、ここからの話では、「ぱっと見」というレベルを超えて、いろいろなものを数値化・定量化していくことが必要になってくる。では、この「バラツキ」というものをどうやって数値化する?

S:バラツキの数値化ですか。

Y: 2次元のグラフだから、ちょっと戸惑うかもしれないけど、もし1次元のデータのバラツキを数値化しろと言われたら...

S:えーと、SDとかですか?

Y:そう。分散とか標準偏差(SD)とか。これはどうやって計算するか覚えてる?

S:ウッ(汗)・・・だいたいはわかります。ただ計算式はすぐにはちょっと・・・本を見れば思い出すかなぁ?

Y:オーケー。もし忘れていたら、本かネットでざっとみておいてね(統計学一般については、青木繁伸先生の「統計学自習ノート」なんかすごくお勧め)。
 一次元のデータx(1), x(2), ..., x(n)があって、その平均値をxmと書けば、分散Vは、 で計算できる。

S:思い出しましたよ(笑)。

Y:今回のデータは、上のグラフのように2次元なんだけど、この場合の分散はどうやって求めれば良いかわかる?

S:ウッ(汗)・・・最近蒸しますねぇ。ちょっと冷房入れますか?

Y:1次元の場合の分散は、「各データの値(x(i))と平均値(xm)との距離の二乗和」の平均。2次元の場合も、同じように考えれば良いわけ。ややこしい事をいうと、「距離」のはかり方っていろいろな方法があるんだけど、シンプルなのは、こんな感じ。
S:そうなると、こういうことうですか。まず、メンバー1とメンバー2のi回目の音量をそれぞれm1(i)、m2(i)と書いて、それぞれの平均値をm1m, m2mと書くと。そうすれば、平均の場所(座標)は(m1m, m2m)。
 この平均の場所からi回目の音量の場所との距離L(i)の二乗は、
 これの平均をとれば分散Vが求まるわけで、
Y:そういうこと。これからいろんな分散が出てくるから、いま求めた全体(total)の分散はVtotと書くことにしよう。上の2つのグラフの場合、Vtotは右のグラフの方が大きいのは明らかだよね。

S: はじめに言ってた、「ぱっと見のバラツキ」がVtotを使うと定量化できるということですね。ということは、Vtotが大きいほど協調性が高いということですか?

Y: ばらつきが大きい方が協調性が高いって、変だよね。Vtotだけでは協調性はわからない。それじゃ、今度は「全体の分散」ではなくて、「結果の分散」を計算してみようか。

S: 結果、というと?

Y: 今回のケースでは、「2人の合計の音量を一定の値にしたい」という課題だから、結果は合計音量のこと。メンバー2人の合計の音量をMとすれば、i回目の合計音量は、
S: そうなれば、後は同じ計算ですね。Mの平均値をMm とすれば、結果(result)の分散は、
 結果の分散が小さいということは、結果がうまく制御されているわけだから、協調性高い?!

Y: そういうわけでもない。上の2つのグラフの例は、どちらも結果(合計の音量M(i))は同じになるように作ってあるんだよね。

S: そうでした(忘れた方は「その4」くらいから見直してみてください)。結果が同じになるように作ってあるので、結果の分散も当然同じです。

Y: 大事なのは、全体のバラツキだけでも、結果のバラツキだけでもなくて、分布の形なんです。

S: 前回からそう言ってましたよね。

Y: 今回からいよいよ数式が出てきて、頭痛くなってきた読者もいるの思うので、続きは次回にしましょう。

S: 今回もUCMの計算まではいかなかったんですね。ほんとにUCMの話になるんですか?

Y: 水曜スペシャルのUFOみたいに言わないで....(例えが古すぎ?)


その5:協調性をグラフで見てみよう!(Ⅱ)生体工学技術へその7:結果に影響するバラツキと影響しないバラツキ